茗荷谷通信

株式会社システム科学の最寄り駅である地下鉄茗荷谷駅。 このコーナーでは、弊社に訪れた際にふらりと立ち寄れる茗荷谷周辺の見どころや歳時記をご紹介しています。


第13回 茗荷谷通信「Dは団子のD」

新型コロナウイルスの感染が広がる中、来週からはいよいよゴールデンウィークが始まります。ウイルス感染防止のため、外出を控えた「巣ごもり生活」を選択される方も多いのでは。そんな方に、家にいても楽しめる読書はいかがでしょうか。今日は茗荷谷付近を舞台にしたある推理小説のお話です。

名探偵明智小五郎、怪人二十面相を世に送り出し、大正~昭和にかけて一大推理小説ブームを巻き起こした作家、江戸川乱歩。そのペンネームからして、世界初の推理小説「モルグ街の殺人」を書いたアメリカの作家エドガー・アラン・ポーにあやかったという何とも大胆不敵な作家さんなのです。そんな江戸川乱歩が大正14年に発表したのが「D坂の殺人事件」。その舞台はどうやら茗荷谷近辺らしいということで、早速、我が取材班は、新型コロナウイルス感染防止のため、マスク&手袋の完全装備でこの小説の舞台を探しに街に出たのです。ヒントは「D坂」のD。Dで始まる坂なんて…。茗荷谷界隈を歩き回ること約1時間。小説では、D坂には古本屋と蕎麦屋があると書いてありますが、もう95年も前の話だしな~。と、途方に暮れ天を仰いだ時、信号機の脇の標識が目に。

「あ、団子坂!でぃ、Dだ!」
「最初からDで始まる坂を地図で探せばいいのに」というツッコミをものともせず、我が取材班は「D坂が団子坂であること」を確信!そうです、「D坂の殺人事件」の舞台はここ文京区の団子坂だったのです。「こんなのどかな街で殺人事件が…」などと空想に耽っていると、空想が空腹に…。そういえば、随分歩いたなあと思ったら、ここはもう千駄木。茗荷谷からはちょっと離れてしまいました。この団子坂は文京区千駄木2丁目と3丁目の境を東に下る坂道で、下りきった先は谷中へと続いています。

ところで、団子坂という名称の由来ですが、「坂の途中に団子屋があったから」という説と、「急な坂なので途中で転ぶと団子のようにコロコロ転がってしまうから」という説があるようです。余談ですが、団子坂は森鴎外の『青年』、二葉亭四迷の『浮雲』、そして正岡子規の俳句などにも登場していて、結構有名?な坂のようです。もう一つ付け加えれば、「菊人形(展)」と「藪そば」は、ここ団子坂が発祥の地だとされているようです。

「D坂の殺人事件」は角川文庫、江戸川乱歩文庫から発売されていますが、オンライン図書の青空文庫では無料で読むことができるようです。また、同作品は1998年と2015年に映画化され、また1992年にはテレビドラマ化されています。読書が苦手だという人はこれらの映像で楽しむこともできますね。

作品中に出て来る「冷やしコーヒー」は、今で言う「アイスコーヒー」のことでしょうか。そう言えば、陽気もだいぶ暖かくなって、そろそろアイスコーヒーが飲みたくなって来ました。春の日差しが差し込む部屋で、アイスコーヒーでも飲みながら読書にふけるのもいいかも知れません。皆さん、新型コロナウイルスの感染には十分に気を付けてください。現場撮影を終えた取材班も早々に帰路に着きました。

2020年4月21日