茗荷谷通信
株式会社システム科学の最寄り駅である地下鉄茗荷谷駅。 このコーナーでは、弊社に訪れた際にふらりと立ち寄れる茗荷谷周辺の見どころや歳時記をご紹介しています。
第8回 茗荷谷通信 「文京区の木:イチョウ」
秋も深まり、街を彩る紅葉が一段と目に染みる季節となりましたが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋……と話題に事欠かない秋の季節ですが、今回はこの季節に柔らかな黄色に色づき街の風景に彩を添える銀杏について、少しお話させてください。 弊社のある文京区の“区の木”は「イチョウ」です。区内に多く見られることが選定条件の一つあったそうですが、なるほどお茶の水女子大学や東京大学構内をはじめ、区内の街路樹としてあちこちにたくさんの「イチョウ」を見ることができます。
文京区だけでなく、都内でも数多くみられるイチョウの木ですが、実は恐竜の生きていた中生代から現代まで生き残っている数少ない樹木の一つなのです。かつて世界中に見られたイチョウの木は氷河期にほとんど絶滅しており、なんと現在では「生きている化石」として国際自然保護連合(IUCN)が作成する「レッドリスト」の絶滅危惧IB類に指定されています。今の日本に見られるイチョウの木は(いつ頃伝播したかは諸説分かれておりますが)かろうじてイチョウの生き残っていた中国から伝わったものであり、その後、17世紀末に長崎からドイツ人がヨーロッパへ伝え、イチョウは再び世界へと広がっていきました。
イチョウといえば、夏目漱石の俳句『鐘つけば銀杏ちるなり建長寺』や与謝野晶子の短歌『金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の丘に』を思いうかべますが、実はドイツ人がイチョウをヨーロッパに持ちかえった一世紀ほど後、同国のあの詩人ゲーテもイチョウについてロマンチックな詩を書いて恋人へ贈っています。
『銀杏の葉~Gingo Biloba』
これは はるばると東洋から
わたしの庭に移された木の葉です
この葉には 賢者の心をよろこばせる
ふかい意味がふくまれています
これはもともと一枚の葉が
裂かれて二枚になったのでしょうか
それとも二枚の葉が相手を見つけて
一枚になったのでしょうか
こうした問いに答えられる
ほんとうの意味がどうやらわかってきました
わたしの歌を読んであなたはお気づきになりませんか
わたしも一枚でありながら あなたとむすばれた二枚の葉であることが
『ゲーテ詩集』より(訳・井上正蔵、旺文社文庫, 1968)
秋の終わり、かけがえのない誰かとイチョウの木々を眺めながら「今共にいること」についてゆっくりと考えてみませんか?と言う訳で、今回は柄にもなくセンチメンタルな気分に浸る取材陣でした。
2019年11月28日
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